映画『風が強く吹いている』感想

ZERO-tortoise2009-10-30

 ずいぶん前に試写で観たが、とにかく林遣都がいい。「引き出しの中のラブレター」でもそうだったが、この若い男優は本当に映画向きだ。立ち居振る舞いが画になる俳優だと思う。僕は観ていないのだが、TBSのドラマ「小公女セイラ」に遣都くん出てるだよねぇ。どうなんだろう?TVドラマ。磯P、遣都くんにヘンなクセつけないでね。
 で、映画「風が強く吹いている」の話。直木賞作家・三浦しをんの原作も人気だったし、鈴木裕美の演出による舞台も評判が良かったようだ。満を持しての映画化。超弱小陸上部の10名が「箱根駅伝」出場を目指す汗と涙のスポーツドラマ。小出恵介が演じる頼れるリーダーと、新入生の天才走者役の林遣都のふたり以外は陸上素人のユニークな面々。漫画オタクにクイズオタク、25歳のヘビースモーカー、セレブ留学生、陽気な双子等々。彼らのキャラクターを小出は捉えて指導し、みなランナーとして成長していく。この展開、何かと似てるなあと考えていたのだが、そう、水島新司のマンガ「ドカベン」の初期と同じ匂いがする!
 劇中、林の走る姿がとにかく美しいのだが、10名の出演者全員が過酷なトレーニングを受けたとのこと。遣都くんは本当に大学の陸上部からスカウトされたという逸話が番宣に使われているほど。この映画はストーリー展開の巧みさに加えて、日本国民皆が知っている「箱根駅伝」の映像をリアルにするために最大限の情熱を費やしている。実際の箱根駅伝のコースは、映画のために道路封鎖して撮影することはほとんど不可能だったため、日本各地のフィルムコミッションの協力を得て、箱根駅伝の各区間の特徴的な風景と酷似した場所がロケハンされ撮影されたという。動員されたエキストラは3万人、中継所などには40カ所にカメラが据えられ、リアルな箱根駅伝の映画は撮影された。
 初監督の大森寿美男の演出もハマっている。脚本家が執筆した時、思い描いた画にできるだけ近い映像が撮影できるようにスタッフが一丸となったことがフィルムから感じられる映画だ。千住明の音楽もいい。
 読売新聞が出資していなければ考えられない映像も多い。製作に木下工務店がクレジットされた映画の中でいちばんの作品だと個人的には思う。おすすめ。
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2009年10月31日より全国公開

俺たちはつかんだ。
人生を変える一歩を。
‘真の強さとは何か’に迫る、勇気と希望の感動作

監督・脚本:大森寿美男
原作:三浦しをん
音楽:千住明
出演:小出恵介林遣都中村優一、川村陽介、橋本淳、森廉内野謙太ダンテ・カーヴァー斉藤慶太斉藤祥太津川雅彦

『風が強く吹いている』公式サイト