2009-11-01から1ヶ月間の記事一覧

村上春樹の掌篇小説『蟹』を読む

先日、新たに編まれた村上春樹の短篇集『めくらやなぎと眠る女』が出版された。村上の外国のファンにために彼の選りすぐりの短篇で構成されたコレクションで、それを<逆輸入>の形で再構成したもので、『象の消滅』に続く第2短編集となる。 今回の本の中に…

映画『理想の彼氏』感想

ちょっと前に試写で『理想の彼氏』を観てきた。キャサリン・ゼタ=ジョーンズ演ずる40歳の主婦が、夫の長年にわたる浮気を知って離婚を決意する。2人の子どもを連れてニューヨークへ引っ越し、人生の再スタートを切った彼女は、アパートの下にあるカフェで働…

映画『戦場でワルツを』感想

ずいぶん前に試写で観た。8月の始めに渋谷のショウゲートの試写室に開映間際に滑り込んだ。話題作なので満席に近い状態だった。各国の映画賞を総ナメにして、2008年アカデミー賞外国語映画賞の本命と目されていたが、投票前後にイスラエル軍によるハマスへの…

燐光群の舞台『ハシムラ東郷』を観てきた

何年か前、映像コンテンツの企画で元祖日本人ハリウッドスター・早川雪洲を調べていた時期があった。その企画は実現することなく雲散霧消してしまったのだが、その時僕はGoogleアラートとして<早川雪洲>を登録していて、そのことも先週アラートメールが飛…

自主制作アニメ『フミコの告白』

art

『サマーウォーズ』の細田守監督をはじめ、激賞されている『フミコの告白』だが、ちょっとじっくり観させてもらった。 アニメ製作に近い業界に身を置くものだが、そっか、IT革命wってツールとしてはここまで進んでいるんだというのがまず個人的感想。CG加工…

映画『マイマイ新子と千年の魔法』感想

試写で観た。原作は今年紫綬褒章を受章した芥川賞作家・高樹のぶ子の幼少期の自伝的小説。昭和30年代の山口県防府を舞台に、空想好きで多感な少女・新子の日常を描くアニメーションだ。物語の構造として『となりのトトロ』と似た作品といえるかもしれない。…

映画『つむじ風食堂の夜』感想

ひと月ほど前、試写で観た。 吉田篤弘原作の同名のロングセラー小説を映画化した、心温まるちょっとしたファンタジー。原作者の吉田は主人公を八嶋智人でアテ書きをしたらしいので、映画化にあたってはこれ以上ないキャスティングだろう。 個性的なキャラク…

映画『アンナと過ごした4日間』感想

とある映像の撮影でポーランドに行ったことがある。チェコとの国境のいわゆる「黒い森」がロケ場所だった。ポーランド第4の都市・ブロツワフから山に向かってイェレニャ・グラという小さな町を拠点としてロケ隊を組んだ。滞在中ずっと天気が良くなかったから…

洞口依子映画祭に行ってきた

渋谷唯一の名画座・シネマヴェーラ渋谷で2009年11月7日から20日まで洞口依子さんのデビュー25周年を祝う「洞口依子映画祭」が開催中だ。 僕は11月14日(土)に行ってきた。ラインナップは、洞口のデビュー作『ドレミファ娘の血は騒ぐ』と『CURE キュア』。そ…

映画『沈まぬ太陽』観たけどさ・・・

以前チケットをもらったままになってて、週明けその人(角○映画の関係者)と会う予定が入っていたので、金曜の夜ひとりで観てきましたよ『沈まぬ太陽』。仕事で近くに行っていたので平和島シネサンシャインで19:00から観たのだが、広いシアターに観客8人。…

映画『アンヴィル!夢を諦めきれない男たち』感想

実は10月31日、今から2週間ほど前に「アンヴィル!」を観ている。ちなみにその翌日「THIS IS IT」を観た。マイケル・ジャクソンの映画には複雑な感想を持ってしまったが、「アンヴィル!」関しては、ドキュメンタリー映画として一級品、しっかり感動もした。…

映画『千年の祈り』感想

『千年の祈り』を試写で観た。世界が注目する中国人女性作家のイーユン・リーの短編集の表題作を原作として、かつてポール・オースター脚本のブルックリンのタバコ屋を舞台にした映画『スモーク』で注目を集めた、ウェイン・ワン監督がメガホンを取った作品…

映画『母なる証明』感想

すごいものを観てしまった。やはり韓国の若き鬼才・ポン・ジュノ監督はハンパない。『殺人の追憶』は、人間の持つ暗部をさらす重い映画文法を鮮烈に示した。『グエムル-漢江の怪物-』は国際的に高く評価されたようだが、僕の感想としては、エンディングに向…

映画『パイレーツ・ロック』感想

1966年の英国を舞台に、取締りの網を抜けるため公海に船を浮かべて、24時間ロックを流し続ける海賊ラジオ局と、そんな<堕落した>放送を規制しようとする政府の攻防を描いた痛快ストーリー。英語タイトルの「The Boat That Rocked」がいろいろな意味を成し…

映画『電信柱エレミの恋』感想

ストップモーション・アニメーション『電信柱エレミの恋』を東京都写真美術館ホールで観た。 自分を修理してくれた電力会社の作業員タカハシに恋をしてしまう、電信柱・エレミの切ないラブストーリー。タカハシと話がしたくなったエレミは電話回線に侵入し(…

映画『僕らのワンダフルデイズ』感想

「僕らのワンダフルデイズ」試写を観た。 平凡なサラリーマン役の竹中直人が入院していた病院で、偶然自分がガンで余命半年であることを立ち聞きしてしまう。うつ気味な状態の中、息子の学園祭に行き、高校時代自分たちが組んでいたバンドを思い出す。そして…

映画『スペル』感想

サム・ライミ監督「スペル」を試写で観た。すっかりスパイダーマンシリーズの服装のキチンとした監督としてイメージが定着したライミだが彼の原点は間違いなくホラーだ。1981年の『死霊のはらわた』と同系統の、恐いけど思わず笑っちゃうホラー、あほらしい…

映画『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』はどう観ればいいのだろうか?

映画の日だった2009年11月1日(日)に『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』を観に行った。公開4日間(10/28〜10/31)で50万人以上の動員を記録し、2週間限定公開の予定を急遽(?)4週間に変更した“映画”。僕の周りでもネットでも、感動と絶賛の嵐。そんな中、…

さよならシネ・アミューズ、『アカルイミライ』

ヒューマントラストシネマ文化村通り(旧館名:シネ・アミューズ)が昨日で閉館した。ここ2週間<さよなら興行>として、この映画館で95年以来かけられてきた11作品を1000円で観ることができた。僕は10月18日に『まぶだち』を、そして昨日10月31日に『アカルイ…