映画『アンヴィル!夢を諦めきれない男たち』感想

ZERO-tortoise2009-11-14

 実は10月31日、今から2週間ほど前に「アンヴィル!」を観ている。ちなみにその翌日「THIS IS IT」を観た。マイケル・ジャクソンの映画には複雑な感想を持ってしまったが、「アンヴィル!」関しては、ドキュメンタリー映画として一級品、しっかり感動もした。映画の公式Twitterのフォローもしている。でも、このブログに感想をアップできなかったのは、よかったー、素晴らしい、オススメ以外を語る必要もないように思えたからかもしれない(Twitterではリアルタイムでつぶやいた)。でも、一応、スクリーンで観た映画(試写含む)は感想を書くことを6月以降僕のタスクに勝手にしているので、書くのだ。
 80年代、ヘヴィメタル・ハードロック界に大きな影響力を持つリーディングバンドのひとつだったアンヴィル、並び称された他のバンドは“ビッグ”になっていったが、アンヴィルはその轍を踏むことは適わなかった。映画は、現在ほとんど存在を忘れ去られた彼らが、地元・カナダで地道な仕事をしながら、トロントの小さなライブハウスやヨーロッパ・ツアー(かなりグダグダ)に臨む姿を密着して追っている。そしてアンヴィルのどんな苦境にあっても夢をあきらめず、30年以上も愚直なまでに自らのスタイルを貫きバンド活動を続けるさまは感動的だ。時代から取り残されても、自分の生きる場所は愛する「そこ」にしかない男の物語として、ミッキー・ロークの『レスラー』と似ている。しかし、家族からも見放されたラム=ロークに対して、アンヴィルの家族はみな優しい。呆れながらも彼らに理解を示す。そして、メジャーではないかもしれないが、アンヴィルを愛する世界中のファンもいる。そんな暖かい優しい視線をいちばんにおくっているのは監督のサーシャ・ガヴァシと言える。
 スティーブン・スピルバーグ監督『ターミナル』の脚本家として知られるガヴァシは、読売新聞の記事によると、10代の頃アンヴィルのローディーとしてツアーに同行した経験を持つそうだ。『ターミナル』後、アンヴィルと再会した監督は、不変真如の彼らの姿を見て今回のドキュメンタリーの撮影を決めたという。
 アンヴィルはかたくなだが、決して偏屈ではない。いいヤツ過ぎて看過したチャンスもたくさんあっただろうことは、この映画の愛すべき彼らを観ていると自然とうかがえた。メタルには決して明るくない僕だが存分に楽しめた作品だ。オススメです。
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2009年10月24日(土)より TOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国順次拡大公開中

原題:ANVIL! THE STORY OF ANVIL
監督:サーシャ・ガヴァシ
出演:スティーブ・“リップス”・クドロー、ロブ・ライナー 他

公式サイト