映画『千年の祈り』感想

ZERO-tortoise2009-11-12

『千年の祈り』を試写で観た。世界が注目する中国人女性作家のイーユン・リーの短編集の表題作を原作として、かつてポール・オースター脚本のブルックリンのタバコ屋を舞台にした映画『スモーク』で注目を集めた、ウェイン・ワン監督がメガホンを取った作品だ。この心優しい愛のドラマは、2007年のドノスティア=サン・セバスティアン国際映画祭金貝賞(最高賞グランプリ)を受賞しているとのこと。
 アメリカ在住の娘が夫と別れた理由を知るために、北京から異国の地を訪れた父親の姿を描いた、地味だがなかなか心に染みる映画だった。同じようなシチュエーションの映画、昔観たような気がするが何だっけなあ?と観ている最中から気になったが、帰路やっと思い出した。アン・リーのデビュー作「推手」と似ているのだ。でもウェイン・ワンの描く父親は、アン・リーの父ほど頑固ではなく、物腰は柔らかい。
 この不器用な父娘は言葉少なげに食卓をはさむ。お互いを思いやってはいるのに、父は昔のひとつの嘘が、娘は父に話していない本当のことが、お互いを無口にしてしまう。小津を思わせる丹念な人物の拾い上げが印象的な家族ドラマ。
 たまにはこんな静かな映画をたしなむ秋の一日もいいかもしれない。
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2009年11月14日恵比寿ガーデンシネマより全国順次ロードショー

原題:A Thousand Years of Good Prayers
監督:ウェイン・ワン
原作・脚本:イーユン・リー
出演:フェイ・ユー、ヘンリー・オー、パヴェル・リチニコフ

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