映画『母なる証明』感想

ZERO-tortoise2009-11-10

 すごいものを観てしまった。やはり韓国の若き鬼才・ポン・ジュノ監督はハンパない。『殺人の追憶』は、人間の持つ暗部をさらす重い映画文法を鮮烈に示した。『グエムル-漢江の怪物-』は国際的に高く評価されたようだが、僕の感想としては、エンディングに向かう装置として、ご都合主義的に家族を配置し過ぎかなという印象だった。何より、怪物の造作がパトレーバーの「廃棄物13号」と似すぎていることもマイナスポイントだった。で、長編としては3年ぶりとなる待望の最新作『母なる証明』。
 貧しいながらも幸せに暮らしていた母子、ある日溺愛するひとり息子が警察に拘束されてしまう。殺人事件の容疑者にされてしまった息子の無実を信じ、孤立無援の母は、ひたむきにたったひとりで事件の真相に迫ろうとする。
 日本ではウォンビンの兵役後の復帰作としてパブが打たれて、<バンビのような>美しい無垢な瞳を持つ息子・トジュンをウォンビンは好演している。しかし、この映画は原題が示す通り、<母>の物語だ。“韓国の母”とも称される国民的大女優、キム・ヘジャ演じる母親が凄い。そしてヘジャが演じる母には名前が与えられていない。そのまま<母>なのだ。そして、息子への深く強い愛は、ある種の狂気をはらむことを僕たちに知らしめる。

「ディズニー映画のような母でない、破格の母を描こうと考えていました」とポン・ジュノ監督は語っている。韓国の大衆音楽・ポンチャックの踊りの中に呆然と入り進んでいく母の姿には戦慄を覚えた。
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2009年10月31日よりシネマライズシネスイッチ銀座新宿バルト9ほか全国ロードショー

最も“謎”に満ちているのは、人間そのものである――。
殺人事件の容疑者となった息子を救うため、真犯人を追っていく母親の姿を
極限まで描き出す“ヒューマン・ミステリー”の最高傑作が誕生!
母なる証明

原題:MOTHER
監督:ポン・ジュノ
原案:ポン・ジュノ
脚本:パク・ウンギョ、ポン・ジュノ
出演:キム・ヘジャ、ウォンビン、チン・グ、ユン・ジェムン、チョン・ミソン

公式サイト