映画『マイマイ新子と千年の魔法』感想

ZERO-tortoise2009-11-20

 試写で観た。原作は今年紫綬褒章を受章した芥川賞作家・高樹のぶ子の幼少期の自伝的小説。昭和30年代の山口県防府を舞台に、空想好きで多感な少女・新子の日常を描くアニメーションだ。物語の構造として『となりのトトロ』と似た作品といえるかもしれない。片渕須直監督はいわゆる<宮崎駿学校>出身のアニメーターで、ジブリでも『魔女の宅急便』の演出を当初していたが、宮崎が途中から監督に就いたため演出補となった履歴を持つらしい。アニメファンには『アリーテ姫』や『ブラック・ラグーン』の監督として知られているだろう。
 片渕監督は朝日新聞のインタビューで「子供と世の中の接点に『死』を置く原作の構成にひかれた」と語っているように、フォーマットは似ているが『マイマイ新子〜』が『トトロ』と決定的に異なっているのは、子供たちがいくつかの<死>と向き合うことを通じて成長していく点だ。千年の昔、平安時代の地方の国の都「国衙」について空想する新子は、現実のどこまでも続く麦畑と青い空に重ねて、千年の魔法のように平安の風景や人々の暮らしを観て感じ取ることができる。でも、新子には空想の世界に自身を埋没しているだけでは許されない、キンとした現実も降りかかってくる。そして新子とその仲間たちが精一杯、それを受け止める姿は観る者の胸を震わせる。
 アニメーションの制作は今年資本を増資してますます意欲的なマッドハウス。年末の、りんたろう監督『よなよなペンギン』の公開もひかえて、この『マイマイ新子〜』のスマッシュヒットも待望していることだろう。(しかし、マイマイとかよなよなとか、へんなタイトルだなあ)
 この作品のボイスキャストで刮眼したのは新子の声をあてた福田麻由子だ。演技上手な子役として注目され成長してきた福田だが、ともすればその演技はオーバーアクトに映ってしまうことが近作は多かったような気がする。それがアニメーションの中のキャラクターというフィルターを通すと思いの外馴染みが良いと思った。声優プロパーの発声法でない彼女の声は今後需要を高めていくような気がする。
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2009年11月21日(土)より新宿ピカデリー他 全国ロードショー

監督・脚本:片渕須直
原作:高樹のぶ子
制作:マッドハウス
声の出演:福田麻由子水沢奈子森迫永依本上まなみ 他

公式サイト

※追記
上映存続の署名サイトが立ち上がりました。是非!

『マイマイ新子と千年の魔法』上映存続を!