午前三時のベーコンエッグ丼


その夜更け、巨大な悪意を孕んだオーロラのような空腹感が、突然等々力の空を覆う。
確固たる意思と信念の許に成立しているその空腹感は、支配下の人々を、シベリア鉄道に潜り込んだホーボーのようにひもじく、フィヨルドを無言で去る少女のように孤独に、湖畔のロッジの風邪引き男のように心許なくさせた。
灯油が切れ暖房が死んだ部屋はあくまで寒く虚しい。
年末外出前に、空っぽにしたままの冷蔵庫のドアを、寂寞とした心持ちで開く。その中に残されているのは、日の過ぎたベーコンと卵、ふやけた海苔、忘却の彼方の辛子マヨネーズ、冷凍したご飯、等々。むむ、東京ポッド許可局でマキタスポーツが力説していた、ベーコンエッグ丼にうってつけの食材。
矜恃としての真夜中の三分間料理が、何かの神事のように厳かに執り行われる。
そしてベーコンと海苔とご飯の邂逅を祝してわしわしと喰らう。
空腹は満たされ、風が凪いだカナリア諸島のビーチのように穏やかな微睡みが訪れる。
あぁいかん、また体重が‥‥