村上春樹短編『木野』感想

図書館で『文藝春秋』2月号を借りて、村上春樹短編新作「女のいない男」シリーズの『木野』を読む。連作の3篇目は、これまでビートルズの曲題をタイトルとしてきたラインから外れた。妻に浮気をされて別れて、ひとりひっそりとバーを開く主人公とバーの店名が、小説のタイトルとなっている。
文中、「どこにもいない男」というキーワードが出てくるから、まあ、ビートルズ的解釈だと『No Where Man』とだろう。名前のない猫も出てくるので、漱石メタファーも今作でも忘れていない。
小説の肌触りとしては、羊+国境の南……をリアリズムの文体で書いたちょっとしたホラーといえる。中編にもなり得るくらい、素材はたっぷり詰まった短編で、それが逆に読者に消化不良を思わせるのだろう。

文藝春秋 2014年 02月号 [雑誌]

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