2009-06-01から1ヶ月間の記事一覧

1Q84読中メモ12

第12章(天吾)あなたの王国が私たちにもたらせられますように 政治と宗教は似ている。そのドグマが急進的な時、否応なくそれに属するものと周りの人や状況を飲み込んでいく。自分の意志とは無関係に巻き込まれた子供には深い禍根を残すのかもしれない。 ふ…

1Q84読中メモ11

第11章(青豆)肉体こそが人間にとっての神殿である 青豆の現職への出自とクライアントとのなれそめが語られる。意識的にふたつの物語の小道具が重なり合っていく。マクガフィンはあるのか。 <〜「じゃあ逆の言い方をすれば、じきに世界が終わるというのは…

1Q84読中メモ10

第10章(天吾)本物の血が流れる実物の革命 以前、村上春樹がどこかのインタビューで今度の長編に関して応えるなかで、石原都政を一種のファシズムとして語る言葉が印象的だった。先頃のイスラエルでの文学賞受賞スピーチの「システムとしての壁」批判の記憶…

1Q84読中メモ9

第9章(青豆)風景が変わり、ルールが変わった 青豆は出来事の「ズレ」を検証するため、近くの図書館に行き新聞の縮刷版でここ二年の事件を調べる。世の中のコンテンツが電子化され検索可能になる前、確かに我々は何年か前のことを調べるのに縮刷版をいちい…

1Q84読中メモ8

第8章(天吾)知らないところに行って知らない誰かに会う『空気さなぎ』執筆の秘密の輪郭が天吾とふかえりの会話のしじまにあぶり出され、彼女の独特のコミュニケーションの<理由>も推察されていく。 日曜日を忌み嫌う天吾の過去が語られる。父にまつわる…

1Q84読中メモ7

第7章(青豆)蝶を起こさないようにとても静かに 物語はハードボイルドテイストを増し、青豆の仕事のクライアントである謎の老婦人と巨漢のボディガードが登場する。青豆と老婦人に交わされる会話から、第3章での青豆の仕事の「発注理由」が明らかにされ、…

1Q84読中メモ6

第6章(天吾)我々はかなり遠くまで行くのだろうか? 天吾が『空気さなぎ』を書き直すシステマチックで丁寧な過程は、村上自身の小説の推敲を連想させる。 この後物語は『空気さなぎ』が作られていくストーリーと共に、ふかえりのいた(であろう)山中のコミュ…

1Q84読中メモ5

第5章(青豆)専門的な技能と訓練が必要とされる職業 ホテルのバーで青豆はオトコを値踏みする。 <〜それから男はふと思いついたように、カティサークはあるだろうかと尋ねた。ある、とバーテンダーは言った。悪くない、と青豆は思う。選ぶのがシーバス・リ…

1Q84読中メモ4

第4章(天吾)あなたがそれを望むのであれば 往年の村上小説の主人公よろしく天吾が巻き込まれ型のキャラとして話が進んでゆく。 <天吾は首を振った。一蓮托生? やれやれ、いったいいつからそんな大層なことになってしまったんだ。>という、懐かしのフレ…

1Q84読中メモ3

第3章(青豆)変更されたいくつかの事実 リアリティを切り取るとそこには避けようのない性と死のイメージが伴う。青豆は「シンフォニエッタ」の旋律を底奏に忍ばせて行動してゆく。 <〜部屋のドアをノックする。軽く簡潔にノックする。しばらく待つ。それ…

1Q84読中メモ2

第2章(天吾)ちょっとした別のアイデア 原初の記憶をトラウマの発作として持つ駆け出しのライター・天吾の章。 物静かで思慮深い彼は村上の往年の主人公を自然と思い出させる。編集者・小松との会話は「ノルウェイの森」のワタナベ君と永沢さんを思わせる…

1Q84読中メモ1

ようやく読み始める。じっくりページを繰っていきたいと思う。 第1章(青豆)見かけにだまされないように ちょっとしたことで世の中の位相は変わるかもしれないが、それに惑わされてはいけないと、カーステの充実した個人タクシーの運転手の青豆へのアドバ…

コンテンツの土曜日3

本郷の東大は五月祭で人があふれかえっていた。文化祭の空気やざわめき、高揚感は僕らの学生時代とちっとも進化も退化もしておらず、そのままそこにあった。 みうらじゅんの「アウトドア般若心経」と題された後援会は、そんな学祭の中、赤門研究棟の階段教室…

コンテンツの土曜日2

土曜日の遅い朝。小雨が降っている。二日酔いでにぶく痛む頭をごまかしながらどうにかベッドから這い出る。しばらく何するでもなしに垂れ流されるTVモニタを眺めていた。そして机の端にある「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序(1.11)」のDVDを買ったことを…

コンテンツの土曜日1

五月の最後の金曜日、久しぶりに会った友人としこたま飲んで終電で帰った。雨上がりの夜空の下、ゆっくり時間をかけて誰も待たないマンションへと向かった。 ポストに不在連絡票が入っていたので宅配ボックスを開けると、アマゾンから村上春樹の新作とヱヴァ…