1Q84

1Q84読中メモ通し

1ヶ月以上にわたって、読みながらしてきたメモを自分のためにまとめてみる。最初の頃なんて何書いたか完全に忘れちゃってるし、読了した今となっては、見当違いな部分も多いだろう。 小説自体は(青豆)と(天吾)を主人公とした章が交互に進められるが、今…

1Q84読中メモ48

第24章(天吾)まだ温もりが残っているうちに いよいよBOOK2最後の章だ。 父を見舞うため、天吾はひとり千倉の施設へ向かう。そして、静かに昏睡状態にある父親のベッドの脇で天吾は独白する。父親と別れて暮らすようになってからのこと、小学生の頃、自分は…

1Q84読中メモ47

第23章(青豆)タイガーをあなたの車に 「青豆」の章ラスト、いよいよ大詰めだ。 用意ができている青豆は、『華麗なる賭け』のフェイ・ダナウェイのようにクールでセクシーなビジネス・スーツを身にまとい、タクシーに乗る。そして<1Q84>の出発点を確…

1Q84読中メモ46

第22章(天吾)月がふたつ空に浮かんでいるかぎり 天吾は部屋に戻ると、父のいる千倉の施設から電話があったことを知り、先方に折り返しかけてみる。そして父が原因不明の昏睡状態にあることを知る。60代だが、まるで生きる意志が薄くなったかのような、役目…

1Q84読中メモ45

第21章(青豆)どうすればいいのだろう ベランダのガーデンチェアでふたつの月を眺めながら、青豆は自分の部屋に残してきた哀れなゴムの木のことを思う。彼女が所有したただひとつの生命だ。決して丁寧に育てた訳ではないが、こうして追われる身になると妙に…

1Q84読中メモ44

第20章(天吾)せいうちと狂った帽子屋 これまででいちばん短い章。スライドしてしまったこの世界の事実確認と、小説全体へのアクセントか。まあ、テレコでふたつの物語を重ねてきた訳だから、こういった「調整」も必要なのだろう。とにかく、残りページも少…

1Q84読中メモ43

第19章(青豆)ドウタが目覚めたときには 青豆は『空気さなぎ』を読み進めていく。僕たちはようやくその小説がどんな物語なのかを垣間見ることができる。 さて、純粋なメモ:空気さなぎ→ドウタを生成 ドウタ(分身)=マザ(実体)の心の影 リトル・ピープル…

1Q84読中メモ42

第18章(天吾)寡黙な一人ぼっちの衛星 ふかえりの預言者的発言傾向はますます強くなっていく。天吾は青豆の記憶をたどる思考に集中するため、ふかえりを部屋に残して高円寺の町に出る。 そして町の風景が描写される。テンションのかかっていた物語のテンポ…

1Q84読中メモ41

第17章(青豆)ネズミを取り出す 青豆もセーフハウスで朝を迎える。そして老婦人のボディガードから電話がかかってくる。青豆を実の娘のように思う老婦人との、たぶん、最後の会話。青豆と老婦人はとても特殊な関係ではあったが、何かを共有することができた…

1Q84読中メモ40

第16章(天吾)まるで幽霊船のように 天吾は自分のアパートでふかえりと何も予定のない日の朝を迎える。彼女との会話は相変わらず暗示的・限定的で要領を得ない。編集者・小松と連絡を取ろうと出版社に電話するが、小松も「失踪」している。村上的、やれやれ…

1Q84読中メモ39

第15章(青豆)いよいよお化けの時間が始まる 青豆は「仕事」を終えてホテル・オークラを後にする。1Q84世界はリトル・ピープルがもたらしたゲリラ豪雨で交通機関が混乱していた。青豆はタクシーに乗り込むと、運転手は赤坂見附の駅に大量の雨水が流れ込…

1Q84読中メモ38

第14章(天吾)手渡されたパッケージ ふかえりとベッドの中で抱き合いながら天吾は、窓の外の激しい雷鳴にノアの洪水を思う。 <〜もしそうだとしたら、こんな激しい雷雨の中で、サイのつがいやら、ライオンのつがいやら、ニシキヘビのつがいやらと狭い方舟…

1Q84読中メモ37

第13章(青豆)もしあなたの愛がなければ 2冊通して全48章の物語は、37番目の章をむかえていよいよ核心が語られることになる。1Q84世界の成り立ち、リトル・ピープルと呼ばれるものが意味すること、青豆・天吾・ふかえりの関係性とそれぞれに課された役…

1Q84読中メモ36

第12章(天吾)指では数えられないもの 天吾が部屋に戻るとふかえりはシャワーを浴びた後だった。髪を上げた彼女はいつもと印象が違う。 <〜おかげで耳と首筋がすっかりむき出しになっていた。ついさっき作りあげられて、柔らかいブラシで粉を払われたばか…

1Q84読中メモ35

第11章(青豆)均衡そのものが善なのだ ターゲットの黒幕に対して、青豆は表の仕事の作業をプロフェッショナルに進めていく。そして老婦人から依頼された、裏の仕事に段階を進めるが青豆を何かが躊躇させる。すべて黒幕に把握されているような気がする。 探…

1Q84読中メモ34

第10章(天吾)申し出は拒絶された 父親のもとから自分のアパートに戻り、天吾は深い眠りにつく。 <〜翌朝、八時過ぎに目を覚ましたとき、自分が新しい人間になっていることに天吾は気づいた。目覚めは心地よく、腕や脚の筋肉はしなやかで、健全な刺激を待…

1Q84読中メモ33

第9章(青豆)恩寵の代償として届けられるもの 村上春樹小説世界においては、主人公はほとんど光のないホテルの部屋でキーパーソンと対面することになる。『ダンス・ダンス・ダンス』では、いるかホテルの時折つながる真っ暗な異空間で、羊男はじっと主人公…

1Q84読中メモ32

第8章(天吾)そろそろ猫たちがやってくる時刻だ ひとりポツネンとしてしまった天吾は目的なく外出する。そして何かに導かれるように父親のいる千倉を訪ねる。(千倉は安西水丸氏の故郷で、ハルキ・水丸がふたりで行った『村上朝日堂』のエッセイが懐かしい…

1Q84読中メモ31

第7章(青豆)あなたがこれから足を踏み入れようとしているのは<〜ホテル・オークラ本館のロビーは広々として天井が高く、ほの暗く、巨大で上品な洞窟を思わせた。ソファに腰をおろして何ごとかを語り合う人々の声は、臓腑を抜かれた生き物のため息のように…

1Q84読中メモ30

第6章(天吾)我々はとても長い腕を持っています 編集者・小松から送られてきた『空気さなぎ』の書評の束を読んで天吾は思う。 <〜『空気さなぎ』を読み終えて「ミステリアスな疑問符のプールの中に取り残されたままに」なっている善男善女に対し、天吾は同…

1Q84読中メモ29

第5章(青豆)一匹のネズミが菜食主義の猫に出会う ひとりぼっちに戻ってしまった青豆は気持ちと部屋の整理を進める。青豆は来るべき「仕事」のために準備を整える必要があった。さまざまなものをそぎ落としていく過程は自然に自己の内面に向き合う作業を伴…

1Q84読中メモ28

第4章(天吾)そんなことは望まない方がいいのかもしれない 天吾は、十歳の頃クラスのいじめから一度かばったことのある女の子のことをぼんやり考える。親の宗教に振り回されて教室で浮いていた子、誰もいない放課後黙って天吾の手をじっと握り何も言わずに…

1Q84読中メモ27

第3章(青豆)生まれ方は選べないが、死に方は選べる 梅雨の明けた澄み渡った夜空の月たちを見上げて青豆は思う。 親との縁を切り孤独に生きてきた自分。自ら命を絶った唯一の高校時代からの親友。出会いは行きずりの軽いものだったが自分を思ってくれている…

1Q84読中メモ26

第2章(天吾)魂のほかには何も持ち合わせていない 手塚治虫のある種のキャラクターは彼の作品を超越して登場する。ヒゲオヤジ、ロック、サルタ、ランプ、ヒョウタンツギ(?)…、いわゆるスター・システムだ。 村上春樹の作品世界でも直接つながりのない小説間…

1Q84読中メモ25

BOOK2<7月-9月>に突入。村上春樹の著作で分冊された長編のうち、『ダンス・ダンス・ダンス』『海辺のカフカ』はそれぞれ上・下で、章の番号も通しで書かれた。『ねじまき鳥クロニクル』は第1部・第2部で発表され、チャプターはそれぞれふられていた。そして時…

1Q84読中メモ24

第24章(天吾)ここではない世界であることの意味はどこにあるのだろう いよいよBOOK1最後の章。 冒頭にこの章の時点が7月半ばであると記される。ん? book1<4月-6月>と表紙にあるけど…。時制にこだわる村上春樹がこんなケアレスミスを犯すわけもなく、きっ…

1Q84読中メモ23

第23章(青豆)これは何かの始まりに過ぎない 奔放な性を享受しているある種の女性は、原体験として男性に対する恐怖感が植え付けられていることがある。その反動として不特定の男との性に身を埋め、自分の根をぼやかそうとする。 青豆のシングルバーでのパ…

1Q84読中メモ22

第22章(天吾)時間がいびつなかたちをとって進み得ること 天吾は脳について思索し、それが生み出す時間と空間と可能性の観念がヒトをヒトたらしめてると考える。その観念によって主観的に時間性を変更調整して、せっせと記憶の積み直しを人間はしている。 …

1Q84読中メモ20

第20章(天吾)気の毒なギリヤーク人 眠れない夜、天吾のアパートでふかえりと彼は物語の世界に身を沈める。 天吾の求めに応じて、ふかえりは『平家物語』の壇ノ浦での安徳天皇の入水自害の段を暗誦する。村上の著作で実在の物語が2ページにわたって引用さ…

1Q84読中メモ19

第19章(青豆)秘密を分かち合う女たち 青豆の生きる死と性・暴力に満ちた1Q84世界に、めじるしのない悪夢のようにカルト教団の影がしのび寄る。様々な「歪み」を内包する現実を見つめながら青豆と老婦人はカルト集団と向き合い、「むずかしい仕事」に臨…