1Q84読中メモ26

第2章(天吾)魂のほかには何も持ち合わせていない

 手塚治虫のある種のキャラクターは彼の作品を超越して登場する。ヒゲオヤジ、ロック、サルタ、ランプ、ヒョウタンツギ(?)…、いわゆるスター・システムだ。
 村上春樹の作品世界でも直接つながりのない小説間に同一キャラと思わせる人物がたびたび見受けられる。そして『1Q84』のこの章でもそんな人物である「牛河」がのっそりと現れる。
「牛河」は『ねじまき鳥クロニクル』の中で主人公に「黒幕」のメッセンジャーとして登場した。『1Q84』の牛河は天吾を予備校講師の控え室に訪ねてくる。彼は不吉で不快な使者として天吾に<警告>を残していく。
<〜リトル・ピープルの知恵や力は先生やあなたに害を及ぼすかもしれない、ふかえりはテープの中でそう語っていた。もりのなかではきをつけるように。天吾は思わずあたりを見回した。そう、森の奥は彼らの世界なのだ。〜>