1Q84読中メモ48

第24章(天吾)まだ温もりが残っているうちに
 いよいよBOOK2最後の章だ。
 父を見舞うため、天吾はひとり千倉の施設へ向かう。そして、静かに昏睡状態にある父親のベッドの脇で天吾は独白する。父親と別れて暮らすようになってからのこと、小学生の頃、自分は何を思って父の横を歩いていたか、ただ淡々と話していく。父の反応は勿論ない。
 検査のため空いたベッドに天吾のための「空気さなぎ」が出現する。その中には十歳の青豆が横たわっていた。天吾は決意を新たにする。ぼくは必ず君を見つける
<〜月が見えなくなると、もう一度胸に温もりが戻ってきた。それは旅人の行く手に見える小さな灯火のような、ほのかではあるが約束を伝える確かな温もりだった。
 これからこの世界で生きていくのだ、と天吾は目を閉じて思った。それがどのような成り立ちを持つ世界なのか、どのような原理のもとに動いているのか、彼にはまだわからない。そこでこれから何が起ころうとしているのか、予測もつかない。しかしそれでもいい。怯える必要はない。たとえ何が待ち受けていようと、彼はこの月のふたつある世界を生き延び、歩むべき道を見いだしていくだろう。この温もりを忘れさえしなければ、この心を失いさえしなければ。〜>

 というわけで、1ヶ月以上に亘り、『1Q84』を1章読むごとにこのブログにメモを書いてきた。こんな作業をしながら本を読んだのは初めての経験で、しんどくはあったけどなかなか楽しくもあった。自分の中の「村上春樹」体験を振り返ることもでした。おつかれさま→じぶん。
 しかしこの終わり方だと、多くの人はBOOK3が出ると期待するだろう。『ねじまき鳥クロニクル』が第3部で、シナモンとナツメグという新たなキャラクターを得たように、『1Q84』BOOK3があるとしたら、天吾とふかえりにどういったキャラクターが加わるのだろう。青豆の章の最後に出てきたぴかぴかのメルセデスに乗る婦人が重要な人物だったりして。
 想像は拡がる。BOOK3があるとしたら<10月ー12月>になるだろう。そう考えるとBOOK4はないわけ? 物語のステージが1985年に入っちゃうし。それともループして、1984年の1月から3月の物語をBOOK4とするのか。それも『1Q84』の構成から考えても面白いかもしれない。
1Q84』の作中、月のふたつある世界を呼称するとき、<1Q84年>と必ずがついていたことも気になる。天吾たちがこれからも生きていくと誓った<世界>は、1年間を繰り返す、サザエさん・コナン・うる星やつら的時制のなのかな? 1Q85年という世界が1Q84年と地続きになったとしたら、その時閉じられた1Q84が解放されるのかもしれない。
 以前村上春樹はインタビューで、今度の小説は『ねじまき鳥〜』よりも長いものになると明言していたから、『1Q84』のまだ発表されていない部分はきっとあるのだろう(構想だけだとしても)。でもこんなふうに200万部売れちゃって、みんなが続編あるっしょ!的な感想を抱くと、わかりやすいカタチでの『1Q84』の続きは発表されなくなっちゃうかもしれない、ハルキさんのこれまでの性向からして。『ねじまき鳥〜』から大幅削除された部分をベースにして『国境の南、太陽の西』という小説が生まれたように、『1Q84』の続編は別のカタチをとるかもしれない。
 さてさて。僕的には、この小説はしばらく寝かした後、今度は一気読みしようかな。