1Q84読中メモ37

第13章(青豆)もしあなたの愛がなければ
 2冊通して全48章の物語は、37番目の章をむかえていよいよ核心が語られることになる。1Q84世界の成り立ち、リトル・ピープルと呼ばれるものが意味すること、青豆・天吾・ふかえりの関係性とそれぞれに課された役割、「黒幕」の後ろにあるモノ、パシヴァとレシヴァ。
 リトル・ピープルが中空から紡ぎ出す<空気さなぎ>は、ハルキさんがよく言う【物語】そのものかもしれない。ウイルスのように我々の世界に巣くうコトモノへの「抗体」としての物語、うむ、『1Q84』自身が<空気さなぎ>だったのか。
 大枠の謎が説明され、物語の構造も明らかにされた。それでもまだ多く残る、コトバや出来事のシニフィアンは、残り200ページで回収され、あるべき位置に納まるのだろうか。さて。村上春樹、腕の見せ所である。

<〜青豆は目を閉じて、一瞬のあいだに長い歳月を振り返り、見渡した。高い丘に上がり、切り立った断崖から眼下に海峡を見渡すみたいに。彼女は海の匂いを感じることができた。深い風の音を聞き取りことができた。
 彼女は言った。「私たちはもっと前に、勇気を出してお互いを捜しあうべきだったのね。そうすれば私たちは本来の世界でひとつになることもできたのに」〜>
 青豆は後悔する。でも1Q84ではもうどうすることもできない。彼女は二者選択を迫られ、決断することになる。