1Q84読中メモ46

第22章(天吾)月がふたつ空に浮かんでいるかぎり
 天吾は部屋に戻ると、父のいる千倉の施設から電話があったことを知り、先方に折り返しかけてみる。そして父が原因不明の昏睡状態にあることを知る。60代だが、まるで生きる意志が薄くなったかのような、役目を終えて人知れず秘密の墓場へ向かうゾウのように、バイタルサインが落ちてるという。明日、千倉(ふかえりの中ではねこのまち)を訪れることを天吾は施設へ伝える。
『空気さなぎ』の中の「ふたつの月」が、天吾の住むこの世界まで浸食していること、レシヴァとパシヴァとしての天吾とふかえりについて、天吾はあれこれ考え、ふかえりに質問するが、彼女は相変わらず答えたいことしか答えようとしない。
<〜情報は日々更新されている。彼だけがそれらについて何ひとつ知らされていない。
「原因と結果がどうしようもなく入り乱れているみたいだ」と天吾は気を取り直して言った。「どちらが先でどちらが後なのか順番がわからない。しかしいずれにせよ、僕らはとにかくこの新しい世界に入り込んでいる」
 ふかえりは顔を上げ、天吾の目をのぞき込んだ。気のせいかもしれないけど、その瞳の中には優しい光のようなものが微かにうかがえた。
「いずれにせよ、もう元の世界はない」と天吾は言った。
 ふかえりは小さく肩をすぼめた。「わたしたちはここでいきていく」
「月の二個ある世界で?」〜>
 そしてふかえりは『羊をめぐる冒険』の<彼女>のように、美しい耳を髪から出して天吾にささやく。おなじではない。あなたはかわったと。
 さとなおさ〜ん、『1Q84』の世界へようこそ。僕はそろそろ、やっと読み終わります。