アリスはおもむろにスイッチを押した

 酔っぱらってホルモン焼き屋から帰宅してテレビをつけると「アリス」が映し出された。僕が最初に好きになったフォークグループ、八十年代前半に解散して幾たびか限定的再結成しているバンドだ。今年はメンバー全員が還暦を迎えて、気持ちも新たに全国ツアーをおこなうらしい。う〜ん、感慨深いっす。
 高校の文化祭のバンドの出し物で、僕はアリスの『遠くて汽笛を聴きながら』と大瀧詠一の『スピーチ・バルーン』とサイモン&ガーファンクルビートルズを一緒にやった人間である。現在の感覚で言うと、氷川きよしKREVAを同じステージやるような違和感を感じるだろうが、八十年代にはそれほど(少なくとも僕にとっては)奇異なものではなかったと言い訳する。
 谷村新司は何か中国で教授になってあやしい雰囲気だし、堀内孝雄はすっかり演歌歌手だし、矢沢透は六本木の焼鳥屋さんだし、僕にとってアリスはやはり思春期の気恥ずかしさの記憶の集合体のような存在かもしれない。
 僕にとって、チンペイの『ヤンタン』や、『セイ!ヤン』の天才・秀才・バカの豆本性教育の入り口であり、マイナーなおかしみを教えてくれたセンセイだったと思う。番組のナレーションのチンペイさんの甘い声色を聴いていると、忘れ去っていたそんな記憶もよみがえってくる。
 谷村チンペイさんの「くさい」歌詞が好きだった。彼の書く、ちょっとしゃれた(と当時思っていた)エッセイに男の生き様を見ていた。うむ、僕の根幹の何パーセントはまごうことなく「アリス」に組成されていることを認めざるを得ませんな(←何で偉そう?)。
 アリスのために作られたプロダクションで、結当時のフォークグループが多く在籍した事務所「ヤング・ジャパン」は、その後モー娘。アップフロントエイジェンシーとなった、というエピソードも意義深い、かな?


NHK songs アリス