1Q84読中メモ13

第13章(青豆)生まれながらの被害者

 ほぼ一日一章のペースで1Q84を読み、僕は都度都度このメモをしてきた。発売2週間を迎えて100万部を超えたこの小説のレビューは、さすがにネットや新聞のそこかしこで記されている(ようだ)。「Google急上昇ワード」にも「1Q84 あらすじ」というワードが挙がっていて焦る。僕は注意深くそれを読まないように通り過ぎて、ハルキさんが語りかける物語だけに純粋に耳を澄ましている。このメモもできるだけネタバレを避けているつもりだ。
 閑話休題。(青豆)の章は、やはり主軸を性と死・暴力に真正面から対峙して展開していくのか。青豆の奔放な性の起因には死があり、青豆がもたらす死の理由には暴力がある。ん、逆も言えるかな? セックス・死・パワーは三すくみの環を描く。
<「あなたは自分を損なうようなことは何もしていない」と老婦人は言った。「何ひとつ。それはわかっていますね?」
「わかっています」と青豆は言った。そのとおりだと青豆は思う。自分を損なうようなことは何もしていない。それでも何かは静かにあとに残るのだ。ワインの瓶の底の澱のように。>
 ストーリーテラーとしての村上春樹は僕たちのやすい想像の上を行ってくれるのが嬉しい。300ページにして、青豆と天吾の物語が重なり合う、思いがけないかたちで。