1Q84読中メモ14

第14章(天吾)ほとんどの読者がこれまで目にしたことのないものごと

 電車の女性週刊誌の中吊りに「新刊『1Q84』を読む前に村上春樹必修ネタ」という見出しがおどる。100万部を超え、この小説は「現象」となりつつあるようだ。まずいな、『ノルウェイの森』の時のように、ハルキさん、またへそ曲げてこもったり、疲弊して頭の中に二匹の蜂が飛ばなければいいけど…。
 編集者・小松に天吾は「空気さなぎ」の経過報告をし、プロジェクトの危うさを説くが、もう引き戻しは不可能だと小松はきかない。
 そしてこの章では天吾の父からの自立と思春期が語られる。
<〜物語の役目は、おおまかな言い方をすれば、ひとつの問題をべつのかたちに置き換えることである。そしてその移動の質や方向性によって、解答のあり方が物語的に示唆される。〜中略〜それは理解できない呪文が書かれた紙片のようなものだ。時として整合性を欠いており、すぐに実際的な役には立たない。しかしそれは可能性を含んでいる。〜中略〜そんな可能性が彼の心を、奥の方からじんわりと温めてくれる。〜>天吾が物語にのめり込んだ理由。それはふかえりにとっての「空気さなぎ」であり、村上の持つ小説観を伺わせる。
 天吾の章にも「シンフォニエッタ」が響き始めた。