「謎の1セント硬貨」真実は細部に宿るinUSA を読んだ

 どこかの書評でおすすめだったので、図書館で予約して読む。順番が巡ってくるまで3ヶ月くらいかったかな。
 で、とても面白かった。よく知らなかったのだが、今年の「講談社エッセイ賞」受賞作らしい。不勉強で、著者の向井万起男氏のことも、日本人初の女性宇宙飛行士の夫で、オカッパとヒゲというアイコンで、岡千秋のルックス・イメージと混同していたくらいだ。向井万起男は、これまでもエッセイを何冊も出しているベストセラー作家、今回の作品は 10年振りの満を持しての刊行とのこと。
 本人いわく「いまだかつてない、誰も読んだことのないアメリカ論」。ヒューストンに居留する夫人を訪ねてアメリカに通う中で、疑問に感じたこと(とっても仔細なことからアメリカン・スピリッツの根源まで)を、現地で訊き、インターネットで調べて、それでも分からないクエスチョンを、関連サイトの連絡先にバンバン質問メールして、その結果を興味深く綴ってくれる。
 彼の眼のつけどころも楽しい。1セント硬貨からアメリカにまつわる<14>という数字に疑問を持ったり、全米のトヨタのディーラーには何故大きな星条旗が掲げられているのか不思議に思う。ポパイの街と日系アメリカ人収容所跡の今に歴史を思い、アメリカ人の温泉観を分析する。そして質問メールを送った相手も多岐にわたり、アメリカ下院議員、ヒューストン市警、ニューヨーク市長、ウォールストリートジャーナル、野球の殿堂、アメリカの退役軍人、そして、サイトを運営する大勢の一般民間人たち・・・。
 向井は、医者としての探究心と、持って生まれたバイタリティや好奇心、そして臆することなく(当たり前か)向井千秋の夫であることを肯定的に受け入れる楽天家性を併せ持ち、絶妙にそれらを相乗効果をかもして、この痛快なエッセイは綴られている。

 マンハッタンの南に浮かぶ自由の女神リバティ島が、州境的にはニュージャージー州だが、州属としては、歴史的な取り決めでニューヨーク州だとはじめて知った。


             
向井万起男氏10年ぶりの書き下ろし最新刊「10年間、誰にも言わず企画を温め、コツコツ原稿を執筆してきたメッチャクチャ思い入れのある作品」と向井氏自身が熱く語るのだから、面白くないはずがない!
大ベストセラー『君について行こう』『女房が宇宙を飛んだ』以来、なんと10年ぶりの完全書き下ろし。マキオちゃんとチアキちゃんの大陸横断“珍”道中。「アメリカ人のホンネ」がよ〜くわかる本。

謎の1セント硬貨 真実は細部に宿るinUSA

謎の1セント硬貨 真実は細部に宿るinUSA