『小松政夫とイッセー尾形のびーめん生活2009』感想

 2009年8月15日、小松政夫イッセー尾形の二人芝居をクエストホールで観てきた。小松さんのステージを生で観るのは初めて。
 イッセー尾形の一人芝居の舞台は、一種独特の緊張感がピンと張られていて、観るものにもある種の緊張感を要求するが、それと比較するとこのふたりのステージは、のびのび・ほんわかした自由ないいお芝居だった。さくさくとネタの人物設定と大まかな流れを作って、それを舞台上でお互いの演技を観ながら結構自由に展開させていたのではないか。イッセーさんがストーリーライン内で小松さんに対してネタをフッてその芸を楽しんでいる感じ。ちょっとした段取りのミスがあり、カーテンコール(カーテンないけど)で小松政夫が「こんなに甘えさせてくれる観客はいない」と言っていたが、何だが、観客とイッセー尾形小松政夫の芸を楽しませてもらっているという、不思議な会場の雰囲気だった。

 ネタは以下の6本。演目はDVD、チラシのイラストから。(仮)のものは僕が勝手に命名


1.セールス
 昭和30年代、庭先のお父さんにトヨペットのセールスマンがコロナのセールスに訪れる一コマ。小松政夫は、植木等の運転手になる前、実際に車のセールスマンをしていて、かなり優秀な成績を収めていたらしい。小松の著作『のぼせもんやけん』に詳しい。免許がないというご主人に5日で免許を取らせるからといったセールスの応酬があったが、どうやら実話で、小松さんは本当に教習所に段取りしていたという。まさに小松政夫の実地芸。


2.おばあちゃんと都会の女(仮)
 ふらりと田舎を訪れるヒッピーな都会の女と、寂れた民宿のおばあちゃんのお話。小松政夫のおばあちゃん芸をイッセー尾形も楽しむ風のネタは展開される。


3.ベンチの少女(仮)
 お二人に加えてベンチで絵本を読む少女が加わる。東京を訪れた老夫婦が、3人掛けのベンチで休もうとするが真ん中には少女が陣取っていた。その少女をめぐり、老夫婦の奇想天外な会話が繰り広げられる。一種のシチュエーション・コメディで、少女は基本的に無反応という設定だったようだが、アドリブで芝居は展開してゆく。


4.境内で講談
 小松の講談師芸。ファンだか、冷やかしだか解らないセーラー服のイッセーが絡んでゆく。


5.クリスマスケーキ
 このネタは今回の中で、話の流れをちゃんと作り込んであるコントらしいコントだった。クリスマスケーキを抱えるサラリーマンの上司と部下。上司は帰宅したいのだが部下は飲みたい。おでん屋の屋台でのそんなふたりの思惑のやりとりがおかしい。


6.うたごえ喫茶
 なぜかコサックの衣装のイッセーさんと、小学生の格好の小松さん。イッセー尾形が楽器で伴奏して、小松政夫昭和歌謡を歌う。んで、細かい芸をイッセーがフり、小松が応えていく。チラシのイメージイラストに「うたごえ喫茶」と書いてあったので、ああそういうことねと後からわかったが、ネタの最中は設定がわからず、ある種アナーキーな舞台だった。小松政夫、昭和芸の真骨頂。


 後半、ちょっと小松さんに疲労感が垣間見られたが、あたたかいいい舞台でした。
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小松政夫イッセー尾形のびーめん生活 2009
昨年、神戸と金沢で小松政夫さんとイッセー尾形は新ネタ下ろしを重ねていました。
この二人が今、この年齢になって描く世界は抜けて明るく力強く、喜劇の真髄を発揮していると
観る方のご満足を必ずお約束します!

2009年8月14日(金)〜8月16日(日)
会場 原宿クエストホール

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