『日本人の知らない日本語』

1Q84』が発売される前、アマゾンで総合1位を獲得したベストセラー・コミックエッセイ『日本人の知らない日本語』を今更読んだ。というか、図書館で予約して(したことすら忘れていたが)半年くらい経ってようやく予約の番が回ってきたので読むことができた。
 外国人対象の日本語学校の教師の体験するエピソード漫画なのだが、異文化から眺める外国語としての日本語に対する生徒の、日本人には気づきにくい疑問が楽しい。
 挿話的に語られる日本語の歴史トリビアは「へえ〜」値も僕自身多かった。現在の僕らが当たり前に標準と思って普通に使っている日本語も、時代時代に様々なハヤリを取り込んで変化してきたものだという、言語流転の当たり前を教えてくれた。
 印象的だった例。「〜もじ」という語感が可愛くて、室町時代の女官の間で流行した言葉が何だか残っていたりするらしい。しゃくし→しゃもじ、かみ(髪)→かもじ、ひだるい→ひもじ(い)等々。つまり室町時代のギャル語だ。
 室町ギャルたちのマイブームは、接頭語でも定着している。名詞を上品にするとき付ける「お」。「屁」は下品だから「鳴らす」に「お」を付けて「おなら」。「田楽」にもつけて「おでん」とkawaiiく表現。なるほど、だから関西ではおでんは「かんとだき」なのね。
 カタカナはもともと漢語のフリガナ用の文字として開発されたというのも目からうろこ。行間の隙間に書きやすいように字面もシンプルな造形になった。一方、ひらがなは、漢字のくずしから派出したので、結構勝手にひらがなを造作したらしい。なかには合略かなという、1文字1シラブルではないかな文字もあった。1文字で「まいらせそうろう」とか。明治以降やっと政令として1ひらなが1字の標準を規定し、それ以外のかなを変体がなと名付けた。へんたいって・・・。江戸から続くお店の屋号に見知らぬひらがながあったりするが、その名残なわけだ。
 方言が標準語となった例もある。「です・ます」はもともと江戸時代の芸者言葉で、江戸に上がった田舎武士が江戸言葉と勘違いして使ったことが由来。「〜であります」も山口の方言。維新で長州出身者が軍の上層を多数のため軍人用語っぽくなった。呼び掛けの「おいこら」も鹿児島弁で「ちょっときみ」という意なのに、憲兵さんに薩摩出身が多かったため上からの物言いとされてしまった。へえええええ〜。

「日本の駐車場はとても優しい」という外国人生徒がいた。「だって<前向きに>と励ましてくれるもの」。www。
 秋に続編が出版されるそうです。

日本人の知らない日本語

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