『イッセー尾形のこれからの生活2009 in 夏』

ZERO-tortoise2009-08-24

 2009年8月22日(土)14:00〜16:00@原宿クエストホール「イッセー尾形のこれからの生活2009 in 夏」を観劇する。サイトの情報だと「これからの生活」だが、会場でいただいたチラシでは「とまらない生活」、どっちなのだろう? まあ、どっちでもいいっすけど。
 オール新作7本、うち過去のネタに登場したキャラクターと同一人物と思われるもの(シーリーズもの)が3本あった。卸したてのネタだが5日目ということもあり、結構固まってきた状態かな。半熟卵を愛するようにこの段階のネタはフワフワしていて僕は好きだ。慣らし運転中アイドリングをしてこの辺かな?とエンジンの回り具合を試すように、イッセーさんがネタの拡がりを楽しいでいる風でもある。夏の東京で6回公演されたこれらのネタを持って、鹿児島・富山・長野・群馬・・・と公演されるようなので、それぞれのネタがいろいろなものを吸い取って熟成されていくのだろう。
 原宿公演では以下の7本。演目はチラシのイラストに付されたメモによる(正式なタイトルではないのかな)。


1.相変わらずのバーテン
 80年のデビュー当時からイッセー尾形が演じ続ける「バーテン」の新作。バーテンは相変わらず団扇を持ち、従業員・ジュンをからかい、ホステスのみっちゃんとダルい時間を過ごす。こいつら、もう何歳なんだ? 時間を超越した彼らは、何だか「ルパン三世次元大介峰不二子」を思わせる。そういえばバーテンのお店の名前が「ルパン」ということが判明(これまでに出てたっけ?)。澱んだ時間の中を生きる彼らには、東京オリンピックと新幹線開通とバブル景気と大阪万博の前後関係も曖昧だ。彼らはずっとそんなふうに客の来ないお店で時間をつぶし続けているのだろう、これからもずっと。


2.デジャヴおばさんのトランジット
 09年のGW公演で観た「デジャブおばさん」が今度はイスタンブールに近い外国の空港にトランジットで秘書といる。実母が亡くなっての傷心旅行らしい。「デジャブ」は口にしないが、決まった時間に美容と健康のために「顔面体操」は欠かさない。おばさん、結構人生楽しそうだ。


3.試着室の恐怖
 どこか地方のブティック。東京からのひとり旅行(お城・ロープウェイ・水族館に行ったらしい)の女性が、カーテンのない試着室に困っている。そこに次々と遠慮なく、ナゾの行動の地元の人が絡んでいく。いかにも、しょうもないトラブルに巻き込まれそうな女性を演じさせると、イッセーさんは上手だなあ。


4.ペットショップ店長代行
 スーツの脂性っぽいおじさんが居心地悪そうにペットショップいる。詳しい説明もされず、友人から店長代行を引き受けてしまったらしい。犬には吼えられし、オウムには莫迦にされる。挙動は「ひとり酒」のサラリーマンのおじさんを思い出させる。でもおじさん、最後は力技で犬たちと分かり合った!?


5.城跡青年の東京就職
 「わたしの大手町」で観た民話好きな青年が、念願かなって東京に就職したが・・・。半年経って帰郷して、東京からの転校生だった女の子・イマイに愚痴をこぼす。東京には泣ける土着の話がないと嘆く。そのイマイさん、どうやらヤンデレらしく、日本の時刻表は精読してしまったから今はプラハの時刻表に夢中だと言う。城跡青年はちょっとだけ成長していて、女の子に緊張してもうその辺の葉っぱとかは食べない。


6.地下100メートルでおこっていること
 イッセー尾形の一大ジャンル、工事現場モノ。「私の大手町」公演で「昔のネタをやってカラダをこんだけ動かしていたんだ、まだ動くんだ」とイッセーさんは再認したらしいが、そんなことも影響しての現場ネタかも。たぶん久しぶりだろう。同じ工事現場でもヒエラルキーがあるんだよ、というお話。


7.常連のファンが次々と亡くなっていくのよ
 今回唯一の音楽芝居。妙齢(から随分過ぎたであろう)のクラブ歌手が、常連さんの死亡を小噺(?)にしながら、ウクレレとバイオリンを演奏しながら、イッセーのいつものヘンテコな歌が繰り広げられる。今回ネタの仕込みの時間はあまりなかった(新ネタ披露だと直前まで知らなかったらしい)ようだから、こなれた音楽ネタは難しいだろう。このお芝居が、公演を繰り返していくうちにいちばん変化・進化していくような気がする。


公式サイト