スペシャルドラマ「白洲次郎」

 放送終了後、twitterのTLも好意的なつぶやきで昨夜埋め尽くされていたが、僕は自宅を離れていたので、最終話を先ほど観た。原田芳雄の体調不良で3話の放送が伸びた関係で、お話はどこまでやったんだっけ?的な部分はありましたが。
 NHKの底力を感じるドラマだった。さすが日本の放送局で最大の社員数を誇る局だと思いました。伊勢谷友介も、主演にその名があると「とんでも邦画」だぜのアイコンになっていたが、なかなかどうしてこのドラマがきっと彼の代表作になるのでしょう。彼自身たぶん英語の発音とか含めてかなり入れ込んでいたことを伺える力演でした。中谷美紀に関しては個人的にファンなので評価が甘くなる。だって、桜ッ子クラブの頃から注目、写真集「ABOUT A GIRL」持ってるし、ビデオ「butterfish」も棚にあったりするコアファンかもしれないっすジブン。書いていてキモイ。とにかく今回のドラマでは、白洲正子をきっちり演じていた。タバコ嫌いの彼女が、フェイクだろうが紫煙にさらされるのは結構大変だったと想像する。生前の正子さんの語りを何かで聞いたことがあるが、ドラマの正子人格でのナレーションの口調が晩年の正子さんととても近かったと思う。
 3・4年前、僕は白洲次郎に凝った時期があった。半世紀前「プリンシプル」「カントリージェントルマン」を標榜していた日本人に興味がそそられたのだ。鶴川の武相荘も何度か訪れたことがある。近くにある関東では珍しい「コメダコーヒー」のシロノワールで一服して、ユニクロの脇の坂を登ってゆくと白洲邸はある。造成されて当時とは違うのだろうが、朝帰りの白洲正子が上った坂だ。結構な入館料(メンテナンスを考えると適価かもしれないが)を払い中に入ると、藁葺き日本家屋がある。そこかしこに、白洲家の名残とこだわりと生活の匂いを伺える。

 一覧しての印象は、白洲次郎は戦後直後のフィクサーとしての自分をこの家にはほとんど残さなかったということ。ドラマでも次郎さんが資料をたきぎで焼くシーンがあったが、たぶん本当に残っていない。武相荘にある次郎さんは「百姓」としての彼だ。手入れされた耕耘機、使い込んだネコ車が軒下に収まっている。「シラス」と抜き彫りされた道具箱が印象的だった(上の写真)。
 武相荘の屋内で一番圧巻されるのは、白洲正子の書斎だ。蔵書に囲まれて居心地の良さそうな書き物机が配されている。武相荘のヌシは正子だったのだろう。能の本、和洋の審美に関する書籍、そして懇意にしていた評論家・作家の本・・・。中でも、西行に関する蔵書が多くの棚を占めている。ドラマでは、西行の生き様に、白洲次郎の人生を重ね合わせる正子が感動的にオーバーラップされていたが、なるほど、そういう側面もあって正子は西行に熱中したのかもしれない。
 世田谷等々力の「菅田屋」という何でもないラーメン屋の餃子を、晩年白洲次郎は愛したと何かの雑誌で読んだことがある。うん、久し振りにあの餃子食べに行こうかな。

武相荘サイト
5月にtwitterにアップした菅田屋の餃子の写真です