プロペラ犬 第三回公演『サボテニング』感想

ZERO-tortoise2009-12-05

 先週11月28日に観に行って、ああ面白かったとつぶやいて満足していた。で、何度も反芻しているうちに、あれはそうか、こういうことだったんだ的に思えてきたので、結構自分用のメモとして書いてみる。今日明日で楽日なんで多少内容に触れても問題ないかと思うし(東京以外の公演は残っているけどまあネタバレしない程度に)。
プロペラ犬」は女優の水野美紀と作家の楠野一郎の二人が共同主宰している演劇ユニット、第二回公演「ジャージマン」ではバナナマン・設楽統と玉置孝匡を客演に迎えて昨年公演、僕はこの時初めて観させてもらった。第三回公演「サボテニング」は、演出にペンギンプルペイリパイルズの倉持裕を迎えて、猫背椿福田転球を客演で演られた。大人計画の猫背の怪演ぶりは予備知識もあり期待に違わぬ活躍だったが、福田転球はこの舞台で初めて知った。いやいや、いい俳優さんだなあ、いじられキャラが今回の配役ではぴったりハマっていた。今後、要チェック・転球。
 物語は、売れない俳優と天然ボケ妻・ゆずな(福田転球水野美紀)、将来レッチリになりたい娘・辛子(猫背椿)の家庭が中心に進んでいく。夫は昔から大事にしているサボテンを相手にセリフの練習をし、妻は自分には話しかけてくれない夫を不満に思いながら今日も餃子を作る。娘はギスギスして頼りない両親を不満に思って背中に誤字のタトゥーを彫る。…こうして書くと深刻な舞台に思えてくるが勿論そんなことはない。この家族の現在・過去・未来をクロスオーバー的に描きながら、様々なエピソードが挿入され、そのエピソードが本流に回収されていく見事な脚本だと思う。
 売れない俳優の夫は、本当にあったことしか描かない作家となり、妻はある時から「サボテンをする」=サボテニングとなる。夫は娘・辛子の三者面談でとんでもない担任教師にド肝を抜き、辛子(からし)出生の秘密の「哀しい看護婦・幸子」のメロドラマが展開される。勿論、舞台は三人しかいないから、彼らが様々なキャラクターを演じ分けるのだが、その転換も笑いにつなげる。キャラの衣装や小道具、シーンの転換の舞台装置もおしゃれで巧い。
 そして何より、やっぱ、水野美紀はいい。もう彼女は雪乃さんじゃない! アクションの出来るコメディエンヌだ!ゆずなだ!しんちゃん風の小生意気子役には本当に笑わせてもらいましたw
 途中、お題をもらって役柄を決めるガチンコのアドリブ合戦もあって本当に盛りだくさんのステージだった。
 それと楠野一郎の趣味だと思うが、あるスジの映画オマージュがいくつも見受けられた。猫背演じる、愛した人を傷つけずにはいられない秘密の乳房の看護婦は「シザーハンズ」だし、水野演じるビックリ担任教師は「死霊のしたたり」(ブライアン・ユズナ監督、だから妻の名はゆずな?)だし、サボテニングって「ザ・フライ」でしょ、きっと。あと、黒い看護婦は「キル・ビル」かな。まだまだ色々潜ませているような気がするけど。

 本当に次回の公演が楽しみな演劇ユニット・プロペラ犬、サイコーでした!
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2009年11月26日〜12月6日 東京 赤坂RED/THATER
12月11日〜12月13日 大阪 HEP HALL
12月9日 佐賀市文化会館 中ホール
12月16日 いわきアリオス小劇場
12月17日 仙台市青年文化センター シアターホール
12月19日 盛岡劇場

作:楠野一郎
演出:倉持裕
出演:水野美紀猫背椿福田転球

プロペラ犬公式サイト