映画『曲がれ!スプーン』感想

ZERO-tortoise2009-12-10

 僕はTBSラジオで毎週土曜日21:30からやっている「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」を結構愛聴している。中でもサイコロの出目で次週の評論する映画を決める、無差別型映画評論コーナー「ザ・シネマハスラー」を楽しみにしていたりする。このところのお題映画は偶然すでに観ていた作品が多かったのだが、12月12日のお題は「曲がれ!スプーン」となった。観ていない、っていうか観たくない。でもなんか、目覚めも悪いので観ちゃいましたよ a Motohiro Picture。いわゆる<打ちに行く>っていう映画鑑賞行動ですね。
 エスパーがシャンパンのコルクを超能力で抜こうとして力んで瓶を割ってしまうシーンで突然気づいたのだが、ずいぶん前にTVでこの話観たことあったw ググってみると、たぶんフジテレビで夜中にやっていた『冬のユリゲラー』らしい。そうかあの話ね、長澤まさみを無理矢理主役にしているので気付かなかったよ。
 このヨーロッパ企画のこなれた脚本を今更映画化する意味が僕にはどうしても理解できない。「カフェ・ド・念力」でのセリフのやりとりも話の構成も、舞台でこそ活きるものでしょ。あまりに動きのない画をどうにかしようと、レール撮影と横パンばかりなのもいかがなものか。同じ本広監督+ヨーロッパ企画の作品としては、『サマータイムマシン・ブルース』の方がずいぶんマシだと思う。タイプスリップものはステージではわかりにくいから、映画はちゃんと処理がされて、それなりに楽しめる作品になっていた。
 映画的な深みを持たせようと、主人公・長澤まさみが幼少期から<不思議大好き>で現在に至る的な設定がなされるのだが、この描き方が本当に薄っぺらでアリバイ的なところも残念な感じだった。そしてラストに映画的カタルシスを加えようと、オリジナルには(多分)なかった<奇跡>が起きてエンディングを迎えるのだが、このシークエンスの「はい、ほれ、感動っしょ、どう?」的な姿勢は、昨今のTV局主導の映画のダメな面を十全に示していると言えるだろう。
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2009年11月21日よりロードショー

監督:本広克行
製作:亀山千広、阿部秀司、島谷能成、杉田成道
原作・脚本:上田誠
製作:フジテレビジョン、ROBOT、博報堂DYメディアパートナーズ東宝日本映画衛星放送
制作プロダクション:ROBOT 
出演:長澤まさみ三宅弘城、諏訪雅、中川晴樹、辻修、川島潤哉岩井秀人寺島進松重豊甲本雅裕三代目魚武濱田成夫ユースケ・サンタマリア升毅佐々木蔵之介平田満木場勝己志賀廣太郎

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