映画『誰がため』感想

ZERO-tortoise2009-12-20

 試写で観た。重厚な作品だ。埋れていたデンマークでのナチスに対するレジスタンスの実話を基に作られた作品らしい。本国ではヒットし、映画賞を総ナメにした。
 第二次大戦中のデンマーク、ドイツの支配を「平和的」に受け入れたおかげで国はそれほど破壊されなかった。しかしドイツの北の玄関マットのような扱いに民族のプライドを奮い立たせる者もいた。地下組織でナチスに凛然と立ち向かったフラメンとシトロンのふたり。自らの正義を信じてナチスを暗殺してゆく彼らに、決して一枚岩ではない組織のほころびが悲劇的にまとわりついていく。裏切り、密告、二重スパイ、共産党、誰が敵で誰が信用できるのか、疑心暗鬼の中で、彼らは徐々に己の任務に疑問を抱いていく。フラメンの線と色素の薄い儚げな横顔に拳銃の硝煙がたなびき、シトロンの宿命的なじっとりとした汗がハンドルを握る手に伝わってゆく…。
 この映画に佐野元春はこんな言葉を寄せている。
「変革に生きたふたりの若きレジスタンス。世界は誰のために、そして君は何のために。この実話を、僕は覚えておこうと、思う。」

 この映画の邦題を観て、僕はまずミスチルの『タガタメ』を思い出した。2005年の愛知万博赤十字館の展示は、この長大な曲に戦争・紛争にまつわるフィルムをコラージュした映像を天球スクリーンに映し出し、ナレーションもテロップもない、とても印象的なものだった。今回の映画にこの邦題をつけたアルシネテランの担当者は、ひょっとしてそのことも念頭にあったのかもしれない。
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2009年12月19日よりシネマライズ他 全国順次ロードショー

原題:Flammen og Citronen(主人公ふたりの名前)
監督:オーレ・クリスチャン・マッセン
製作国:2008年デンマークチェコ・ドイツ合作映画
出演:トゥーレ・リントハート、マッツ・ミケルセンクリスチャン・ベルケル、ハンス・ジシュラー

公式サイト

Mr.Children タガタメ