1Q84読中メモ16

第16章(天吾)気に入ってもらえてとても嬉しい

 15章に続き、この章も物語のジャンクション的なチャプターとしてテンションがゆるめられる。小松の画策する「プロジェクト」は、先生をも巻き込み一層加速していく。天吾とふかえりは小松に言われて「打ち合わせ」をする。
 ふかえりが口にする「めくらの山羊」は村上の短編(『ノルウェイの森』にも取り込まれた)『めくらやなぎと眠る女』を思い出す。差別用語と指摘する天吾が可笑しい。ハルキさんの昔の作品には知ってか知らずかよく共同通信記者ハンドブックが規定する「差別用語」が出てきたものだ。
<〜カウンターに一人で座り、何を思うともなく自分の左手をひとしきり眺めていた。ふかえりがさっきまで握っていた手だ。その手にはまだ少女の指の感触が残っていた。それから彼女の胸のかたちを思い浮かべた。きれいなかたちの胸だった。あまりにも端正で美しいので、そこからは性的な意味すらほとんど失われてしまっている。〜>