映画『サマーウォーズ』感想

サマーウォーズ』の試写を観てきた。あのセンセーショナルだった『時をかける少女』の監督・細田守の最新作だ。
<主人公を取り巻く家族、親戚の全員が主人公とも言える、新しい「家族アクション映画」>という視点がまず新鮮だ。
 物語は、世界中の人が<仮想都市OZ(オズ)>でバーチャルにつながっている、今よりちょっと先の時代が舞台。そんな中、日本の田舎の旧家の大家族が、未曾有のトラブルに巻き込まれていく、そんなお話だ。
 OZに突如現れたAI「ラブマシーン」は、OZの強固なセキュリティを破り、その中枢をハッキングして混乱を起こす。すべてがOZに管理運営されていた現実世界も、「ラブマシーン」の起こした混乱に無関係ではなかった。
 そんな騒ぎを目の当たりにした陣内家16代当主・栄(90歳)は、自分の誕生日に集まっていた親戚を中心に、アナログなつながりでAIに対抗を始める。
「ふたつの世界の危機に ひとつの家族が戦いを挑む!!」

 爽快感のある、悪人がひとりもいない素晴らしいアニメ映画だと思う。夏に家族で観る映画としてうってつけ。宮崎駿が『ハウルの動く城』の監督に選んだ男・細田守はさすがだ。いざという時、日本の大家族ってこうでなきゃなあって感じ。普段はだらしない男性陣と口うるさい女性陣が、有事の際には、男はそれぞれの持ち場で十全に働き、女は守りを固める。まだアニメでこんな感動のさせ方があったとは本当に発見だ。

 細田監督のバーチャル空間は白い。ピコピコいっていない。ポップだ。『時かけ』のタイムリープ空間もデジタル表示がおしゃれだったし、ヴィトンのプロモ映像も白かったなあ。その白い空間に縦横無尽にアバターのモブCGがわらわらとうごめき、「ラブマシーン」に取り込まれてストリームを形成する様子は見事だ。無数で多彩なアバター湯浅政明監督の『マインド・ゲーム』を一気に凌駕したかもしれない。
 OZの中のアバター達には普通に<影>が作画されているのだが、リアル世界のキャラは、細田監督お得意の<影なし作画>で演出されている。動きと表情がしっかりしていないとできない高等テクニックをさらっとやってしまうところがニクい。
 僕はこの映画の前売りも買ってあるのだが、おまけでついて来る「サマーウォーズ ープレガイドブックー」はお勧めだ。家族樹形図とそれぞれのアバターを見比べることのできる構成はなかなか楽しい。
 もう一度、劇場に観に行くのが本当に楽しみな映画だ。ちなみに公開日の8月1日は栄ばあちゃんの誕生日。

監督:細田守
脚本:奥寺佐渡
キャラクターデザイン:貞本義行
美術監督武重洋二
主題歌:山下達郎僕らの夏の夢
アニメーション制作:マッドハウス

2009年8月1日(土)全国劇場公開

公式サイト

タマフルポッドキャストで、宇多丸さんと細田監督の対談を聴いて認識を新たにした。「食事映画」という着眼点も携えて劇場で観ようと思う。

前編
後編