映画『宇宙へ。』感想

 試写で観る。「そらへ」と読む。「ディープ・ブルー」、「アース」を手がけたイギリスのBBCが製作する、ネイチャー・ドキュメンタリーの第3弾。NASAの映像アーカイブにオールアクセスの権利を得て、このドキュメント映画は制作された。ちなみに、ちょこっとUFOが映っている・・・、うそです、矢追系はこの映画には含みませんw。
 J・F・ケネディの「アメリカは60年代中に月へ到達してみせる」という宣言に、NASAは莫大な予算と人材を費やして目標に向かったのだと、この映画を傍観して改めて思った。強いアメリカ、進んだアメリカの全威信を賭した挑戦。アポロ計画への道筋をつけるための、マーキュリー計画ジェミニ計画。そして大気圏外での地球を主とした研究するためのスペースシャトル計画。その足跡として撮影された膨大な映像をたくみに構成してストーリーは進んでいく。しかし、映像記録媒体として16ミリフィルムがもっともハンディだった時代から、よくこれだけ克明に映像をNASAは残したよなあと感心。でも計画そのものの存在理由として、未踏の領域到達に成功したという証拠が必要なわけだから、執拗に記録したのだろう。
 この映画がBBCのネイチャー・ドキュメンタリーシリーズとひと括りにされていたが、前2作と違った様相を呈している。宇宙は表情豊かな自然ではないし、食物連鎖に立脚する無辜の動物は住んでいない。映画で語られることは、そこに挑戦する人間の物語であり、国家のプライドの軌跡だ。しかし、この映画のストーリーラインには、ソ連・ロシアは名前すら出てこない。そこにはさすがに違和感を感じた。
 NHKの「沸騰都市」のセカンドシーズンの実績もあるけれど、宮迫博之のナレーションは良かった。「アース」の日本語版コンダクター(?)の渡辺謙よりハマっていたと思う。

 この映画を観て、僕は忘れていた様々な記憶が蘇った。アポロ月面着陸の<宇宙中継>に60年代キッズは胸を熱くしたように、僕たち80年代キッズは、スペースシャトルに夢中になった。カンプラを作る傍らで、スペースシャトルのプラモデルを作ったことを思い出した。宇宙からちゃんと帰還するロケットにSF萌魂を焦がした。1981年、竹内均教授が創刊した科学雑誌ニュートン」の第1号の特集はスペースシャトルだった。1986年チャレンジャーの事故もリアルタイムでTV中継を観ていた。テレ朝が夜中やっていた「CNNデイウォッチ」で生中継していて、発射が遅れて番組終了間際、空中爆発するスペースシャトルが映し出された。確か、日本のコメンテーターの間抜けな発言で中継が途切れたのを今でも覚えている。

 結構前の話だが、僕はアメリカの博物館からアポロ関連の実物を日本で展示するイベント関連の仕事に携わったことがある。大切に梱包されて空輸されたアポロ14号の司令船とアポロ15号の宇宙服を間近に観ることができた体験は忘れないだろう。宇宙服には月の塵が付いていた。

 男の子はいつの時代も宇宙好きだ。
「宇宙へ。」は、8/21・8/22の2日間限定で500円で観ることができるそうだ。宇宙好きの父子におすすめです。

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幾多の尊い命が、その栄光を支えた。
「宇宙(そら)へ。」
2009年8月21日(金)ロードショー

原題:Rocket Men
監督・脚本・製作総指揮:リチャード・デイル
日本語版ナレーション:宮迫博之
日本語版主題歌:ゴスペラーズ「宇宙へ 〜Reach for the sky〜」
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

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