『ブイヨンの気持ち。』糸井重里

 春先の事だ。土曜の昼時に渋谷に出る用事のあった僕は、母校の青学の学食で昼飯を食べようと思いついた。きっとメニューは変わっているけど、あの地下の学食の閉塞感は妙に懐かしかったので、さてさてということで渋谷から青山通りに急いだ。
 大学に着いてみると何学部かわからないがちょうと入学試験の日だった。受験票のない人間は院内に入ることができなかった。まあ、しょうがないなと期せずして昼食難民と化した僕は、学生当時よく行ったランチの店を何軒か回るが、どれも違う店舗になっていた(僕自身が場所を勘違いしているのも中にはあるかもしれないけど)。
 とぼとぼと青山通りに戻り、うつむき加減に表参道方面へ歩いていると、前からジャックラッセルテリアが歩いてくる。ブチの入り方がブイヨンといっしょだと反射的に思い、リードの先の人を見るとイトイさんだった! 青山通りを闊歩するブイヨンは女の子たちに人気だった。

 ということを図書館で借りた「ブイヨンの気持ち。」を読んでいて思い出した。「ほぼ日」のサイトで毎日のように「気まぐれカメら」を閲覧しているブイヨンファンなのですが、一冊の本として読むと違った感慨がありますねえ。やはり、糸井重里は文字を紡ぐの上手だねえと当たり前のことを思う。だって、僕ら、ブイヨンが何を日々考えて生きているのか知った気になっているもん。

ブイヨンの気持ち。 (ほぼ日ブックス)

ブイヨンの気持ち。 (ほぼ日ブックス)