映画『TAJOMARU』感想

 小栗旬主演の『TAJOMARU』の試写を観てきた。
 実は結構前に観たのだが、その時のリリースだと公開予定が9/19になっていた(9/12・13は先行上映表記)。「カムイ外伝」と直接対決だなあと思っていたのだが、それを避けたのか、はたまた「G.I.ジョー」のおかげで早まったのか事情は知らないが、9/12全国ロードショーとなったようだ。それでも人気のイケメン俳優主演のアクション時代劇という事でふたつの映画はライバル視はされるだろう。
 あくまで個人的な感想だが、小栗旬松山ケンイチ、役者としての存在感は小栗の方があると思う。それはそのままアクターとしてクセがあるという意味でもある。松山は役柄に染まることのできる俳優だが、小栗はどんな役もやっても小栗だ、いい意味でも悪い意味でも。僕は「天地人」での小栗旬石田三成にどこか違和感を感じてしまうのだが、今回の作品でも同様の印象を持ってしまった。その理由はいろいろ考えられるけど、まず、今の彼の声のトーンやしゃべり方が根本的に日本の時代劇に向いていないのかもしれない。でもそれは、裏を返せば役者としての小栗旬が無自覚的に唯一無二を示しているとも言える。うーん。
TAJOMARU」と「カムイ外伝」、監督の力量は圧倒的に崔洋一監督に軍配が上がるだろう。中野裕之監督のこれまでの作品「SF サムライ・フィクション」「RED SHADOW 赤影」と残念ながら同じようなラインに今回の作品もある。この監督、映像作家としての才能はあるのかもしれないが、長編映画に根本的に向いていないのではないかと思ってしまう。エンタテインメント映画の構成として余分な要素が多過ぎる。あれもこれもとプロデューサーや製作委員会の要望を整理しきれていないのだ。コンテンツとして2時間を超える作品にすべきではなかったのでは。時代設定を曖昧にして、ある種どこでもない話にするサムライ映画が中野監督の得意とするところなのだろうが、単に時代考証や設定をちゃんと検証・再現するのが手間なのでぼやかしているだけのような気がしてしまうのは穿ちすぎだろうか。それと、「TAJOMARU」はアクション映画ではないのかもしれないが、殺陣が雑すぎで見所もあまりなかった。
 しつこく「TAJOMARU」と「カムイ外伝」の比較。それぞれの主演女優、柴崎幸と小雪は、好みもあるのかもしれないが、柴崎の方が生々しさがあってよいと思う。いい意味で表情がまだ固まっていない女優はこの先化ける可能性を持っている。それと蛇足だが、この映画のショーケン、何だかすごいことになっているのでこれは一見の価値がありますよ、ホント。
 映画「TAJOMARU」は小林又一朗プロデューサーの企画から始まったとリリースに書かれていた。小栗の舞台「カリギュラ」(彼の情熱大陸のエピローグで語られていたアレですね)を小林が観て、同じような衝撃を受けた黒澤明監督の名作「羅生門」をリメイクしたいと思った。けど、黒沢映画の焼き直しは畏れ多いから、インスパイア?トリビュート??スピンアウト???、とにかく「羅生門」の原作である芥川龍之介の小説「藪の中」を換骨奪胎し(便利な四字熟語だ)「羅生門」で三船敏郎が演じたキャラクター「多襄丸」を膨らませたオリジナルストーリーとして製作したという。
 山本又一朗プロデューサーの映画である「あずみ」「クローズZERO」と出演したきた小栗。「TAJOMARU」は山本プロデューサー作品で成長した、いまの小栗旬を観る映画だ。
 あ、ストーリーに関して何も書いてないや。ま、いいか。
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2009年9月12日(土)全国ロードショー

絶対、女を捨てない。
己を曲げない。
そして、どこまでも自由。

新生 多襄丸が、いま、生きる力を解き放つ!

日本人よ、生き方に迷ったら
この男に会いに来い!

芥川龍之介×小栗旬
世紀を超える超えるコラボが実現!!


TAJOMARU

監督:中野裕之
プロデューサー:山本又一朗
原作:芥川龍之介
脚本:市川森一、水島力也(山本又一朗ペンネーム)
出演:小栗旬柴本幸田中圭、やべきょうすけ、池内博之松方弘樹萩原健一

「TAJOMARU」公式サイト