映画『私の中のあなた』感想

ZERO-tortoise2009-10-07


 試写を観させてもらった。名作だ。配給のGAGAも自信作らしく、マスコミ・一般問わず多くの試写会を催していたので、口コミで評判が拡がっていく作品だと考えているのだろう。
リトル・ミス・サンシャイン』で映画賞を総なめにしたアビゲイル・ブレスリンの演技力がなければ、この映画の魅力は半減しただろう。彼女が演じた少女・アナの、はかなくも姉や家族を思う気持ち、抱えた秘密に揺さぶられる涙は観る者の心を震えさせてくれる。
 キャメロン・ディアスも<母>を力演した。病気の娘のために全力で戦う母親の想いと力を、スクリーンに焼きつける芝居をみせてくれる。そして「私の中のあなた」は家族のあり方を真正面から考えさせてくれ、そしてすとんと胸のうちにあるひとつの結論のありようを落としてくれる。
 監督は『きみに読む物語』のニック・カサヴェテス白血病の姉に対するドナーを拒否して両親を提訴するというシリアスなテーマだが、物語はそこに重きを置かない。カサヴェテス監督は、その裁判の過程と生活の中で浮き上がってくる、母、父、姉、その恋人、妹、弟のそれぞれの心の内を美しく温かな視線で描く。会話が語り終えられる前に画面から音を抜きフィルムのスピードを緩めて表情をゆっくり追う演出が多用されて映画に叙情を添える。登場するすべての人の笑顔のカットが印象的。そしてキャメロンもアビゲイルもジェイソンもソフィアも、その表情が時に幼く、時に大人びて映り、そのギャップに驚かせられる。
 練られた演出と、確かな演技力と、美しいストーリーラインだけが紡ぐことのできる映画。秋に好きな人と一緒に観るのにはうってつけの映画だ。
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2009年10月9日(金)ロードーショー
もう姉のドナーにはならない。
両親に訴訟を起こした、アナ11歳。
しかし、その決断にはある理由があった−−−。
『私の中のあなた』
原題:My Sisters keeper
監督・脚本:ニック・カサヴェテス
出演:キャメロン・ディアスアビゲイル・ブレスリンアレック・ボールドウィンジェイソン・パトリック、ソフィア・ヴァジリーヴァ、ジョーン・キューザック

公式サイト