映画『コトバのない冬』〜空気を震わす事のない沈黙のコダマ

ZERO-tortoise2010-02-18

 渡部篤郎初監督「コトバのない冬」を試写で観た。
<普通に日常を生きていることこそが美しく、
その日常に存在する心の襞(ひだ)の儚さと憂い
『これが伝えたい』というものは特にない、その映画を観て何かを考えてほしい。>
と、渡部篤郎のコトバがリリースある。
 確かに、この映画に物語は、ない。北海道の田舎町で平凡な毎日を愛する高岡早紀と、閉園している遊園地の管理人をしている、声を失った渡部篤郎のひと冬が、静かにひっそりと過ぎてゆく。
 監督・渡部篤郎は、俳優から演技を極端に排する。自然な会話を(たぶん、たくさんの演者の自由なアドリブを含んだまま)淡々と重ねてゆく。ワンシーン、ワンテーク、NGなしで紡がれた映像は、確かに独特の世界観を構築していた。渡部はこんな映画を撮りたかったのだろう。彼の中に有効な「次の一手」が用意されているなら、渡部篤郎は演出家としてもキャリアを積んでゆくと思う。テロップや会話対象者が唖者の筆談を一切説明しない描き方はリアリティがあった。
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2010年2月20日(土)より渋谷・ユーロスペース他全国順次ロードショー

心の片隅に潜む記憶の違和 感--。
シンプルで美しく、哀しい、ある冬におきた物語。

英題:echo of silence
監督・原案: 渡部篤郎
脚本: 岡田惠和
音楽: 屋敷豪太
プロデューサー: 石田基紀
出演:高岡早紀渡部篤郎広田レオナ、未希、鈴木一真北見敏之渡辺えり

公式サイト