映画『息もできない Breathless』言葉にできない映画の力

ZERO-tortoise2010-03-31

 昨年、僕たちは渋谷シネマライズで観た『母なる証明』に韓国映画の持つ底知れぬ<力>を感じたように、2010年、同じ小屋でまた韓国映画にぶちのめされる。
宿命的に拳と罵倒でしかコミュニケーションできないヤクザ者と、明るく勝気に振舞う女子高生が出会う。ふたりは不器用に無骨にお互いをぶつけ合って、それぞれがなくてはならない存在になっていく。ヤクザ者は幼稚園生の甥っ子にはとても優しい。その表し方があまりに下手くそで痛々しい。ヤクザ者と女子高生と幼稚園児が楽しそうに買い物をするシーンで不意に涙があふれてきた。自分がどうしてこんなに胸が震えているのかよくわからなかった。でも、それが映画の力だ。
 単なるDV映画だという感想もあるようだ。確かにそう捉えることも出来るだろう。でも、僕はこの作品の持つメッセージに耳をすませたい。連鎖する<暴力>のあとさきの行き場に眼を凝らしたい。拳を収めた時、語るべき言葉すら失うヤクザ者はあまりに悲しい。

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2010年3月20日(土)渋谷・シネマライズより全国順次公開

愛を知らない男と、愛を夢見た女子高生。
傷ついた二つの魂の邂逅。

原題:똥파리(糞蝿)
英題:Breathless
監督・脚本:ヤン・イクチュン
編集:イ・ヨンジュン、ヤン・イクチュン
撮影:ユン・チョンホ
美術:ホン・ジ
録音:ヤン・ヒョンチョル
製作:ヤン・イクチュン
音楽:インビジブル・フィッシュ
出演:ヤン・イクチュン、キム・コッピ、イ・ファン

公式サイト