佐野元春のザ・ソングライターズ vol.7 スガシカオPart1

 例によって1週間遅れで録画したのものを観た。
 スガシカオはそもそも巷に溢れる歌にラブソングがあまりにも多すぎることに閉口していたという。現実のヒトの生活は決して愛だけで構成されている訳ではなく、さまざまなことに腐心し時間を割いて、僕らは生きているものだ。その生活構成の割合と同じような配分でアルバムを作りたかったとスガは言う。

 僕がスガシカオを知ったのは、ご多分にもれずスマップの「夜空ノムコウ」の歌詞でだ。「心のやらかい場所」という言葉にヤラれた。すぐに「clover」を借りて、それ以降、すべてののアルバムを聴いてきた。
 元春さんも取り上げていたが、スガの中での僕のベストソングは「黄金の月」だ。上記のアルバムの<配分>からも伺えるが、スガシカオは歌詞に対して徹底的にリアリティを追求する。日本のポップスには<太陽>はあふれてるいるけど、<太陽>は実際は直接見ることができないから、直視できる<月>の方がリアリティがあるとスガは語る。だからセカンドシングルは「黄金の月」。

 80年代、日本語の歌詞に変革をもたらしたのは桑田佳祐佐野元春だったと思う。彼らがフォーマット化した新しい日本語の旋律に僕らは心を奪われた。そして、90年代の末にスガシカオが日本語の歌詞の別の可能性の提示した。スガの作る歌の詞は母音の当て方に留意して綴られる。裏拍に強音を当てることでグルーブ感を作っていると自ら解説する。
 
 支配と服従、許すこと、許さないこと(されないこと)をテーマに据えたのも、スガシカオのリアリティを追求したひとつのカタチなのだろう。性の莫迦莫迦しさ・空々しさをメインストリームで初めて表現したシンガーだと元春さんがスガを評した。

 昔から愛好している村上春樹は言葉の師匠、村上の著作の中でスガを取り上げてもらったのは免許皆伝の気分だったと彼は述べていた。


「ザ・ソングライターズ」、8/29(土)はスガシカオが作詞のワークショップ。
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